神経筋トレーニング〜傷害予防のために〜

今回は、「神経筋トレーニング」についてです。
以前も何回かお話ししているのですが、神経筋トレーニングをスポーツ関連傷害に伴う研究では「統合的神経筋トレーニング integrative neuromuscular training」として、6つの基本的な要素に分け、わかりやすくしています。

「動的安定性」「筋力」「プライオメトリックス」「コーディネーション」「スピード&アジリティ」「疲労耐性」 の6つです。

特に、骨・軟骨や筋肉などが成熟していない青少年に対しての傷害予防。さらにそれだけでなく、練習効率の向上・将来的なパフォーマンス向上の爆発的な増加が期待できます。

中枢神経系は髄鞘形成により生誕後2〜5年間に大幅に増加するのですが、その過程は性成熟するまでずっと続くとのことです。これを考えると、成熟するまでに神経筋トレーニングを積んでおくことは非常に重要となります。


【注意点】

神経筋トレーニングは、すべての能力の「基礎」となるべき能力となります。そのため、今までのように集団で練習やトレーニングを積んでいると、個人個人に適切なトレーニングを処方することができなくなってしまいます。

個人個人が基礎的運動能力を高めることは、チームスポーツでも非常に有用であると思います。そのため、あくまで

「個人個人の技術能力にのみ基づいて漸進させるべき」

ということが非常に重要です。

*そして、なにも神経筋トレーニングは青少年だけに有効というわけではありません。例えば、「高齢者」などの転倒原因として、筋力低下よりもむしろこのような神経-筋の機能低下によるところが大きいと思います。筋力などではなく、最も身体機能の基礎的な部分をしっかりトレーニングし、身体を上手に操作できるようにしていく必要があるのでしょう。

プールコンディショニング・アクアコンディショニング

「水は健康の源である」

水を利用した身体機能の改善や疲労回復のアプローチは古くから用いられ、今ではそれを「アクアコンディショニング」として利用されています。水中では

・浮力

・水の粘性抵抗

・水圧

・水温

などが身体への生理的反応をもたらし、陸上では得られない多様な身体機能への効果をもたらしてくれます。


【水がもたらす生理的反応】

○浮力

・山本利春:アクアコンディショニングの有効性 トレーニング科学, Vol.19, No.3, 2007

記載されているように、水深が深くなればなるほど、体重が軽減されていきます。関節や筋に問題を抱える人(選手や高齢者)にとっては、軽い体重負荷で運動ができる絶好の機会を作ることができます。ただし、注意点として、プールから出るときは、脳がその体重負荷に慣れてしまっているので、気をつけましょう。身体の準備ができず、筋肉の反応が遅れて負担が強くかかってしまいます。

○粘性抵抗

「プールの中は歩きづらい」ですよね?体重が軽減されていることもありますが、水の粘性抵抗がかかるので、動きづらくなります。さらに、抵抗は速さと抵抗面積に比例するので、大きな面を早く動かすとかなり大きな粘性抵抗がかかってトレーニングになります。よく高齢者が「水中ウォーキング」をしますが、筋トレにもなって、ひざへ優しいいい運動になります。
また、私がお勧めするのは「ジャンプ」の練習です。陸上でのジャンプでは、重力加速度が生じ、関節や筋へは着地衝撃が生じます。水中では粘性抵抗と浮力によって、着地時の衝撃がほとんどかかりません。身体全身を重力に抗して働かせるいい運動になります。

○水圧

・山本利春:アクアコンディショニングの有効性 トレーニング科学, Vol.19, No.3, 2007

下(足の方)に行くほど水圧が高くなります。つまり、陸上とは逆に、下肢末梢の血流が水圧の小さい心臓の方へ還流しやすくなります。この静脈還流の促進はかなり有効で、疲労物質の多く含まれる静脈血がより早く心臓へ戻され、疲労回復効果があります。ですので、陸上でのトレーニング後にアイシングを兼ねてのプールウォーキングは筋疲労だけでなく、血流改善による疲労回復も期待できるということです。

○水温と熱伝導

水の熱伝導率は空気の約23倍なので、全身を冷やして筋の過剰な炎症を抑えたいときや、温めてリラックスさせたい場合などに有効です。また、交代浴(お湯と水に交互に入る)により、血管の収縮と弛緩を促しての血流改善も可能です。


【アクアトレーニングのススメ】

このように、アクアトレーニングには色々ないい点があります。また、重力をかなり軽減させ、無重力に近い状態で運動できることもあり、リラックスした状態で、関節の可動域(特に肩甲骨)を目一杯使っての自動運動が可能になります。伸ばした手にも浮力がかかるので、動かす方向に抵抗がかかるだけで無駄な力が入らずに動かせるというわけです。

現在、クライアントを水中でコンディショニングしたことはありませんが、ひょっとしたらかなり有効かもしれません。ただ、私自身が上手に動けなく、サポートが難しくなる可能性は非常に高いと思いますが・・・
しかし、一人でやるトレーニングとしてはリスクも少なくかなり有効でしょう。

 

プライオメトリックスの効果

【プライオメトリックスとは】

プライオメトリックスとは、自重を用いた爆発的なレジスタンスエクササイズです。主にスピードとパワーの増大を目的とし、筋の伸張反射を用いてさらに大きな筋力を発揮することに焦点を当てたトレーニングになります。

「伸張反射」というのは、筋繊維が伸ばされた時に縮もうとする反応です。その反応とタイミングを合わせて短縮性の筋活動を行うと発揮筋力が増大します。ジャンプの時、はじめにしゃがんでから飛ぶあれですね。

その、伸ばして〜縮んで(収縮して)をSSC(ストレッチショートニングサイクル)と言うのですが、弾性ネルギー(主に筋腱複合体)を利用しているので、「疲れづらい」と言われています。ランナーなどのアキレス腱は細く長いのに対して、運動不足の人のアキレス腱は「どこだろう・・・?」と言う感じですよね。意外にアキレス腱は大事なんですよ。


【トレーニング】

その「プライオメトリックス」を利用したトレーニングは多岐にわたり、「バスケット」「バレーボール」などジャンプ競技を行う選手は必ずと言っていいほど行っています。

プライオメトリックスの運動では、タイプⅡ繊維(白筋と言われる瞬発力・パワーに特化した筋肉)に圧倒的多くの負荷を与えます。赤筋と言われる持久系の筋肉の損傷が27%程度だったのに対し、85%もの損傷を確認したという研究結果があります。それだけ、瞬発エネルギーに特化した運動だということです。


「傷害予防」

プライオメトリックスエクササイズは、傷害予防の手段としても用いられます。「傷害予防に効果がある」ということは研究されていますが、なぜかは研究されていません。*調べた中では・・・
おそらく、筋腱複合体に刺激を与えているためだと思います。筋腱複合体とは、感覚受容器がかなり豊富にあるところです。要は、関節のズレなどを認知する機能があるところです。つまり、そこを鍛えるということは

「ズレないように反応してくれる機能を高められる」

ということです。

ひょっとしたら、歳をとっていくと怪我をしやすいというのはそう言ったところに起因するものかもしれません。
プライオメトリックスというのはかなり負荷の高い運動ですが、安全に配慮しながら行っていくことで、転倒予防・傷害予防というのを高齢者に対してかなり有効な手段になるのではないかと思います。